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これまで音楽配信市場の大きな障害とされてきた、楽曲ファイルの無料交換の問題は、「ナップスター」のサービス停止によって一応の決着がついたものと思われたが、「WinMX」や「Winny」など新たなPtoPファイル交換ツールが次々と登場し、いまだ多くの違法ファイルが流通しているものと考えられる。
このような無料ファイル交換が、パッケージ製品の販売や正規のオンライン配信サービスの市場に与える直接の影響は明らかではないが、楽曲ファイルの検索やコンテンツのポータビリテイにおいて正規サービスより利便'性が高いこと、また「音楽ファイルは無料で手に入るもの」という感覚がユーザーに浸透してしまったことは、正規サービスの普及を阻害する大きな要因になっていると考えられる。 対策としては、2002年初めごろから、音楽CDのコピーやパソコンへの楽曲の取り込みを制限する機能をもったコピーコントロールCDやレーベルケートCDが導入されている。

また、レコード会社や業界団体は、違法ファイル交換の撲滅に向けた啓蒙活動を展開している。 今後は、このような「防止対策」に加えて、正規サービスの利便性向上や低価格戦略などにより、違法ファイル交換の相対的な魅力を低下させていく取り組みが必要であろう。
店頭端末経由の音楽配信では、レコード店などに設置された端末を使って、MDに手軽に楽曲をダウンロードできるサービスが注目を集めたが、楽曲ラインナップが少ないことや割高な料金が原因となって、利用数が伸び悩んでいる。 2001年末にはデジキューブが事業から撤退し、セブンーイレブンが展開していた「セブンナビ」も2002年秋にサービスを停止するなど、市場環境は厳しい状況が続いている。
2003年5月には、電通、トヨタ自動車、ソニーがコンテンツ配信事業開始に向けた準備会社を設立し、唯一店頭端末向けのサービスを提供していたメディアラグの営業権を譲り受け、トヨタ自動車が展開する情報サービス「G‐BOOK」の車載端末とコンビニやトヨタ販売店に設置された店頭端末向けに音楽配信サービスを展開すると発表した。 今後、店頭端末向け配信は、複数のチャンネルを組み合わせた配信サービスへと転換していくことになる。
もう1つの配信方式である携帯電話・PHS経由の音楽配信サービスには、NTTドコモの「M-stageMusic」や、DDIポケットの「SoundMarket」といったサービスがある。 現状は配信プラットフォームが、PHS端末とNTTドコモのFOMAに限定されており、利用者はごくわずかにとどまっていると考えられる。
今後は、第3世代携帯電話の普及とともに、利用者の拡大が期待される。 <市場拡大に向けた課題>通信インフラの普及状況などを考慮すると、当面はブロードバンド経由の配信が中心になると考えられる。
しかし、現状ではパソコンユーザーを中心としたヘビーユーザーの利用に限定されており、今後の市場規模拡大のためには、よりいっそう利用者の裾野を広げることが必要であろう。 ここでは、ユーザー層の拡大の観点から、3つの課題の解決について述べる。
まず第1は、インターネットに接続したオーディオ機器へ直接コンテンツをダウンロードできるサービスや、ホームサーバーやゲーム機向けの配信サービスによって、一般の音楽ユーザーを取り込むことである。 関連する動きとしては、AV機器へコンテンツを直接配信するサービスのための共通規格を策定する目的で、ソニーなどAV機器メーカー大手4社が、2003年1月に設立した「エニーミュージック」に注目したい。
今後は、家電業界とレコード業界が協調し、共通プラットフォームによる配信サービスが提供されることを期待したい。 第2は、ワンストップサービスの提供である。
レコード店やCDレンタル店では、欲しい楽曲をアーティストや楽曲の名前から探せるのに対して、オンライン配信では、レコード会社各社が個々に開設した配信サイトを通じて楽曲を販売しているため、欲しい楽曲がどのレコード会社からリリースされているかを知っておく必要がある。 オンライン配信の「欲しい楽曲をいつでも購入できる」というメリットを活かすためにも、今後はユーザーがレコード会社を意識せずに楽曲を購入できる環境の整備が必要である。

レコード会社の枠を超えた横断的なサービスの事例としては、2002年12月にスタートし、既存の音楽配信を上回る順調な伸びを見せている「着うた」がある。 携帯電話料金とともにコンテンツの購入代金を支払う課金方式の手軽さに加えて、大手レコード会社が共同で設立し、主要レコード会社が参加している「レーベルモバイル」によって運営されているため、レコード会社を意識せずに利用できることで、ユーザーにとって利用しやすいサービスとなっている。
パソコンやオーデイオ機器向けの音楽配信事業においても、同様にレコード会社の枠を超えたサービスを提供する取り組みが求められる。 第3は、オンデマンド'性を活かしたサービスの提供により、パッケージ製品にはない付加価値サービスを提供することである。
冒頭で示した「アラカルト型」販売は、これにあてはまる。 アメリカでは、月額固定の定額制で、決められた曲数のダウンロードやCDへのコピーが可能なサービスが主流となってきている。
また、米アップルコンピュータが2003年4月に立ち上げた「iTunesMusicStore」では、シングル(1曲99セント)に加えて、アルバムを通常9ドル99セントで販売している。 順調な滑り出しを見せているなかで、アルバム販売に人気があり、楽曲の大半はアルバムの一部として購入されている。
一方、わが国では権利処理や収益配分の問題から、「アラカルト型」やアルバム単位の配信サービスの導入について積極的な検討は行われていない。 今後は、アーテイストや作曲者などとレコード会社、配信事業者の間で、「アラカルト型」に対応した収益配分や、契約形態などを整備していく必要がある。
映像配信はブロードバンド環境の普及に伴い、パソコン向けの映像配信サービスを中心に市場は成長しつつあるものの、早晩にも成長の踊り場に差しかかると予想される。 映像配信市場のさらなる成長のためには、パソコン以外の端末での映像配信視聴環境の整備が不可欠である。
また、消費者の映像コンテンツ視聴のスタイル変化の萌芽が見られ、この変化に対応した端末機能やサービスの登場が突破□となる。 これらへの対応のためにも、映像コンテンツ産業全体でより柔軟なサ一ビスモデルを実現すべく、模索を進めるべきである。

念市場規模予測国内の映像配信市場は、当初の見通しに比べ、成長が伸び悩んでいる。 2002年度の国内市場規模は28億円と推計される。
今後は、ブロードバンド環境の普及や配信対象デバイスの拡充により、映像配信市場は成長軌道に乗り、その規模は2008年度で2460億円に達すると予想される。 2008年度には映像配信は映像産業全体のなかでも一定の位置を占めることになるといえよう。

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